海賊版の発行


著者:富田 徹男


この事件は出庫停止、回収、廃棄と、ダイヤモンド社及び我々特許庁内技術史研究会宛の謝罪文の提出で解決しました。

 ダイヤモンド版の海賊版が現れました。本は下記のものです。

 ヨハンベックマン著・今井幹晴訳・荒俣 宏解説
   『モノここに始まる』   小学館  1999年9月20日発行

                 (実際の発行日は8月27日)


 著作権の基本から見て、その訳者が、直接原著作から翻訳したものについては、著作権侵害には成りません。しかし我々の訳をそのまま用いて自分の本とすることは著作権侵害になります。

 ところでこの訳書は我々がドイツ語から訳したものを英語版から訳したといって載せているのです。具体的にはカレンダーの項目ですが、これは英訳にはありません。
 読んでいると我々の訳と全く同じ文体が続いています。今岩波版を校正中なのですが、全く同じものをもう一度読まされている感じがします。

 以下の文は「自然物の収集」という項目にあるもので、ドン・サルテロという珈琲屋の主人が骨董を集めた店を開いたときの宣伝文です。翻訳の担当者は別の人の名前になっていますが、特にこの部分だけ面白いので、私が歌舞伎の口上のように訳したものです。だから初めにある Sirは「東西東西」と訳してあります。ところが盗訳は「古今東西」。これは日本語に全くなっていません。
 まず英文です。なかなか味のある分だけど、実に訳しにくい。
SIR.-Fifty years since to Chelsea Great, --
     From Rodman, on the Irish main,--
     I stroll'd with maggotos in my pate,
     Where, much improved, they still remain.
  (以下略)

私の訳 「東西、東西―罷り出ましたるは拙者 コーヒー屋のあるじにてござりまする。 アイルランドはロドマン生れ、 チェルシーに参って五〇年、(以下略)
次が盗訳 「古今束西、まかり出ましたるはわたくし、しがないコーヒー屋のあるじで ございます。 アイルランドはロドマン生まれ、ここチェルシーに居を構えてはや五十年、 (以下略)
 ここまで来ると何とも言いようがないお粗末さですね。小学館てこの程度の編集レベルなのかな。こんな出版社から本なんて出したくないですね。

最後の極め付き。

ダイヤモンド版の凡例
「五、本文中で「いま」「現今」とか「わが国」と書かれている部分はベツクマンが書いた部分では「1780−1805五年」、「ドイツ」であり、英訳版第四版の加筆部[ ]で示されている)では「一八四〇年代」、「イギリス」である。」

盗訳の方
ー本書のプロフィールー
「なお、ベックマンが活躍した時代の雰囲気を伝えるために、年号・地名の表記や、すでに今では科学的に実証されている事柄などでも、できるかぎり原著に即し訳した。そのため、本文において、ベックマンが「今」もしくは「現在」といつている年代は、一七八〇〜一八○五年代に相当すること、また、「我が国」とは、、ベックマンの母国ドイツを意味することを前提に読み進めていただきたい。」

 これだと英訳者が追加した部分はどうなっているんでしょうね。英訳もちゃんと読んでいない証拠。それにしてれもここまで同じ文にしなければならないとは !

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